なぜ靴下にプレゼントを入れるの?意味・由来

クリスマスプレゼントと靴下を結びつけた聖ニコラオスの伝説

クリスマスシーズンになると、暖炉や子供の寝室にカラフルな靴下が吊るされている写真やイラストなどをよく見かける。

この靴下は、クリスマスにサンタクロースからプレゼントをもらうための定番の飾り付けとなっている。クリスマスプレゼントは大きい箱状のものが多いので、実際には小さい靴下にはプレゼントは入らないのだが、サンタクロースからプレゼントをもらうためのお決まりのデコレーションとして、欧米圏で定着している。

クリスマスの靴下 暖炉

一体なぜクリスマスプレゼントと靴下が結び付けられているのだろうか?なぜ靴下にクリスマスプレゼントを入れる建前・風習が出来たのだろうか?その由来意味について簡単にまとめてみた。

靴下のルーツは聖ニコラオス

靴下とプレゼントを結び付けたのは、3世紀ローマ帝国時代のトルコに実在したキリスト教の聖人ニコラオス。ラテン語ではニコラウス、英語ではニコラス。リュキア地方の古代都市ミラで大主教をつとめたことから「ミラのニコラウス」と呼ばれる。

ミラのニコラウスは、サンタクロースのルーツ(モデル)と考えられている。

ニコラオスは司祭の時、落ちぶれた豪商(または元貴族)を助けた。商人は貧しくて三人の娘を身売りさせなければならなかったが、ニコラオスは夜中に商人の家の窓から、密かに2度にわたって多額の金貨を投げ入れた。

金を投げ入れる聖ニコラオス

写真:三人の娘が居る貧しい家に金貨を投げ入れる聖ニコラオス(画:ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ)1425年頃

ニコラオスの施しに父親は涙を流して感謝し、娘たちはやがて結婚して幸せに暮らしたという。

この伝説には様々なバリエーションがあるが、ニコラオスの投げた金貨が、暖炉に干されていた靴下の中に(偶然または意図的に)入ったというストーリーが有名。

サンタクロースのルーツとされるニコラオスにまつわる金貨と靴下のストーリーが、現代におけるサンタクロースのプレゼントと靴下を結び付けた由来・起源と考えられている。

煙突から投げ入れた?!

ニコラオスによる金貨と靴下の伝説について、日本国内向けのブログなどを見ると、ニコラオスが金貨を投げ入れたのは、「窓」からではなく「煙突」からであるとする解説を見かけることがある。

ニコラオスの時代(3世紀ローマ帝国)のトルコには、現代のような造りの煙突はおそらく存在していないので、時代考証の観点からは若干疑問が残る。

煙突と屋根

調べてみると、ニコラオスが金貨を投げ入れたのが「窓」から「煙突」に変わったのは、ヨーロッパにおける初期ルネッサンス以降(14世紀頃)のことのようだ。

空を飛んでいくサンタとは異なり、ニコラオスは普通の人間なので、夜中に人の家の屋根にのぼって煙突へ投げ込み、気づかれる前に姿を消すのは結構大変な作業だと思われるが、これもニコラオスが成せる奇跡の業なのだろう。

聖ニコラオスの日とプレゼント

靴下とプレゼントという習慣は、サンタクロースが19世紀アメリカで誕生する前から存在していた。

18世紀初頭のヨーロッパでは、ニコラオスの命日とされる12月6日の「聖ニコラオスの日」に、靴下を暖炉や寝室に飾ってプレゼントを待つ習慣が広まっていた。

シンタクロース オランダ

写真:オランダのシンタクロース(出典:Wikipedia)

オランダでは、聖ニコラオスはシント=ニコーラース(Sint-Nicolaas)、またはシンタクラース(Sinterklaas)と呼ばれ、毎年12月5日(聖ニコラオスの日の前夜)にプレゼントを贈る風習がある。

やがて新大陸アメリカへ移住したオランダ移民によって、シンタクラースがサンタクロースとして広まっていくことになる。

実はイタリアがルーツだった?!

靴下とプレゼントを結び付けた聖ニコラオスのエピソードについては、さらに元ネタがある可能性がある。

イタリアにはベファーナ(Befana)という魔女の伝説があり、エピファニー(公現祭/主顕節)の日である1月6日に、前日までの一年間に良い子だった子供には、靴下にキャンディやプレゼントを入れてくれる。悪い子だった子供には、靴下に炭を入れていくという。

聖ニコラオスは3世紀ローマ帝国時代のミラ(トルコ)における人物だが、11世紀後半、東ローマ帝国領のミラはイスラム王朝のセルジューク朝に征服されてしまう。その際、聖ニコラオスの不朽体(遺体)はイタリアのバリ(バーリ/Bari)へ移管された。

イタリア・バーリのサンニコラ教会

写真:イタリア・バーリのサンニコラ教会(出典:Wikipedia)

聖ニコラオスの不朽体が安置されたイタリア・バーリのサンニコラ教会は、バーリの守護聖人「バーリのニコラ」(Nicola di Bari)の地として巡礼の対象となった。

こうして聖ニコラオスはイタリアと深く結びつき、長い歴史の中で、イタリアのベファーナ伝説とも融合していった可能性があるように思われる。

聖ニコラオスの伝説が記録された最も古い文献は、13世紀後半に完成したキリスト教の聖人伝集「黄金伝説(レゲンダ・アウレア/Legenda aurea)」と思われるが、これは聖ニコラオスの不朽体がイタリアに移管されて数百年後のことであり、ベファーナ伝説の影響を十分に受けた上での聖人伝が記録されている可能性がありそうだ。

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