鬨の声 ときのこえ/勝鬨 かちどき

鬨(とき)という漢字の意味や成り立ちについて

鬨の声(ときのこえ)とは、戦国時代の合戦において、開戦直前に士気を高める意味合いで「エイエイオー!」などと全軍で発する叫び声。

合戦勝利後に行われる場合は「勝鬨/勝ち鬨(かちどき)」と呼ばれる。ちなみに、隅田川の勝鬨橋(かちどきばし)は日露戦争の勝利に由来している。

写真:桶狭間古戦まつり(愛知県豊川市/出典:トーカイナビ)

さて、鬨(とき)という見慣れない漢字が使われているが、この漢字には一体どんな意味や由来・成り立ちがあるのだろうか?簡単にまとめてみた。

なお、日本独自の「エイエイオー!」については、こちらのページ「エイエイオー! 意味・由来・語源は?」でまとめているので合わせてご覧いただきたい。

鬨(とき)の漢字について

鬨(とき)の漢字を次のとおり拡大して確認してみよう。漢字の意味を探るには、門という漢字に良く似た部首「鬥」がポイントとなる。

「鬥」は「たたかいがまえ」または「とうがまえ」と読み、戦いや争いに関する漢字の部首として用いられる。

王様の「王」が二つ並んでいるように見えるので、まるで三国志などの戦場で大軍同士がにらみ合ってる様子を想像したくなるが、漢字の成り立ちとしては、二人の人間が素手でたたかう様子を表す象形文字のようだ。

挿絵は、「鬥」の成り立ちを表す中国の甲骨文字(古代文字)。

鬥と共で「鬨(とき)」

鬨(とき)という漢字は、「鬥」に別の漢字「共」が組み合わさって形成される会意形声文字の一つ。

「共」は、手をそろえて物をささげる様を表しており、「全員で」「全部で」といった副詞的な意味合いもある。

「鬥」と「共」が会意することで、「鬨(とき)」は「大勢がそろって争う」「一斉に声を上げる」といった意味合いになる。

「とき」と読む由来は?

中国由来の漢字「鬨」を日本語で「とき」と読む起源については、はっきりしたことは分かっていない。

一説には、時を告げる声に由来しているのではないかとの解説もあるようだ。

古へ,禁中にて,夜,時を奏(まう)す聲に起ると云ふ。転じて,衆人の呼聲(よびごえ)ともなる。

引用:大槻文彦「大言海」(冨山房)

かつて宮中では、夜警の兵士が時間を奏上する(知らせる)役割を担っていたという。そこから、「時」と「声」が強く結びつけられ、「声」の意味合いで「時(とき)」が用いられることになったと推測される。

部活動やスポーツの試合でも

鬨の声(ときのこえ)は、戦国時代に限らず、現代社会においても学校の部活動やスポーツの試合などで形を変えて耳にすることがよくある。

試合前に選手全員で円陣を組んで叫び声を上げるのも「鬨の声」の一つ。海外では、ラグビーのニュージーランド代表オールブラックスによる民族舞踊「ハカ(Haka)」が有名。

ロシア連邦陸軍では、「万歳」を意味する「ウラー!(Ураааааааа!!)」という鬨の声が使われており、旧ソビエト連邦時代をテーマとした戦争映画でもよく見かける。

大勢で同時に声をそろえて叫ぶことで、一体感の醸成と士気の高揚が期待される。アイドルのライブやコンサートなどで観客がコールを行うのも、ある意味現代版の「鬨の声」なのかもしれない(違う気もするが)。

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