松竹梅 どれが上?ランク 順番 由来

うな重の松竹梅って何?順番が逆の店も?味に違いは?

うなぎ屋でうな重を注文する際、「松・竹・梅」で値段の異なるうな重のメニューがある場合があるが、店によってその値段の順番が真逆だったりして、一体この松竹梅はどっちが上なのか?と軽い疑問を持たれる方も少なくないだろう。

この松竹梅の値段の違いは、品質のランク付けなのか?量の違いなのか?味に違いは?何に由来する?など、主にうな重の松竹梅に着目して簡単に情報をまとめてみた。

写真:うな重 梅(出典:うなぎ割烹 康川/静岡県浜松市)

ちなみに、 夏の「土用の丑の日」にうな丼やうな重などうなぎ料理を食べる習慣については、こちらの「土用の丑の日 意味と由来  うなぎ以外の食べ物は?」のページで解説している。

由来は中国 順番の話ではなかった

松竹梅は、宋(そう/960-1279)の時代の中国における絵画(水墨画)に由来する。松・竹・梅の三つは「歳寒三友(さいかんのさんゆう)」として、絵画の題材として好んで描かれた。

歳寒三友図

写真:中林清淑「歳寒三友図」(出典:長良川画廊)

中国における松竹梅(歳寒三友)は、どんな厳しい環境や時代でも、自らが正しいと信ずる主義・主張を堅く守って生きていく姿の象徴であり、「節操を曲げぬ士人の精神を象徴する画題」(出典:平凡社 百科事典マイペディア)として用いられてきた。

日本では、松竹梅は縁起の良い組み合わせとして定着しているが、これは日本で独自に発展した文化・慣習ということになるだろう。

そして、松>竹>梅の順番付け・ランク付けのような文化もオリジナルの中国にはなく、これも日本独自に定着した使われ方であることが分かる。

飲食店でいつから使われ始めた?

「松竹梅」が飲食店のメニューで使われ始めたのは一体いつ頃からだろうか?

これを文献で確認するのはなかなか難しい事だと思われるが、ネットで軽く調べてみると、「江戸時代」に蕎麦屋、寿司屋などが使い始めたと説明しているページが見られた。

江戸の寿司屋台

写真:江戸の寿司屋台(出典:歌川広重 浮世絵/抜粋 補正あり)

「江戸時代」を裏付ける文献は明示されていなかったが、確かに江戸時代の寿司屋では、寿司飯(酢飯)→シャリ、生姜の甘酢漬け→ガリ、かっぱ巻き、鉄火巻きなど、駄洒落的に別の言い方に置き換える隠語・符牒が多く生まれている。

符牒のオンパレードである江戸前寿司において、寿司の値段分けに「松竹梅」が用いられていたとしても何ら不思議ではない。文献等でいずれ確認できる日がくるだろう。

うなぎの松竹梅 違いは量?

寿司屋の松竹梅では、使われるネタの種類・価格に明らかな差があるが、うなぎ屋の松竹梅にはどんな違いがあるのだろうか?

より高級なうなぎが使われる?特別なタレやご飯が使われる?

答えはいずれもノーだ。

うな重 日本橋 鰻 伊勢定

写真:うな重 梅(出典:日本橋 鰻 伊勢定 本店/ぐるなび)

セットの小鉢やデザートの有無等の違いを除けば、うなぎ屋の松竹梅の違いは大雑把に言って、単なる「うなぎの量」の違いにすぎない(例外的な店もあるかもしれないが)。

松でも竹でも梅でも、使われるうなぎやタレ、ご飯は同じものであり、「うなぎの量」によって価格が分けられている。養殖・天然、日本産・中国産などの違いもない。

その店のタレや焼き加減など自分の好みの味か確かめたいだけであれば、松竹梅のうち最も値段が安いもので十分とも言えるだろう。

うなぎ屋は梅が高い?

ちなみに筆者の経験では、うなぎ屋の松竹梅は、梅が一番高い価格に設定されていることが多いように感じられる。

一般的には、松竹梅は「松」が一番高い値段であることが多いが、なぜかうなぎ屋では梅が一番高いことが少なくなく、注文する際に一瞬戸惑うことが良くある。

その理由は定かではないが、一つの仮説としては、飲食店での松竹梅の元祖が寿司屋だとしたら、うなぎ屋が松竹梅を採用する際、元祖の寿司屋と差異を設けるために、あえて逆にしたという経緯が考えられる。

もう一つの仮説としては、うなぎの「う」と梅の「う」が同じであることが何らかの要因になっているのではと筆者は推測している。皆さんはどうお考えだろうか?

心理学における松竹梅

さて最後に、行動経済学の心理学における松竹梅の効果について簡単にふれておきたい。

うなぎの松竹梅のように、値段が異なる3つの選択肢があると、多くの人は真ん中の商品を選ぶという。

この行動心理は「松竹梅の法則」、「極端の回避性」、「フレーミング効果」、「中心化傾向」などと呼ばれ、飲食店に限らずあらゆる業種に適用できる。

この「松竹梅の法則」を応用すると、真ん中の選択肢を利益率の高い商品にすれば、お店の売り上げ上昇が期待できるが、客の立場からすれば、真ん中を選ぶと店側の思うつぼという結果になりかねない。

「松竹梅の法則」はお店側の戦術なので、せっかく美味しいうな重を食べに来たのなら、客である我々は、その時の食欲やシチュエーションに合わせて、自由にうなぎの大きさを選べばよいだろう。

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