夏越の祓(なごしのはらえ)

年越から半年間の穢れを祓う水無月の大祓

毎年6月末に行われる日本の年中行事「夏越の祓(なごしのはらえ)」について、意味や由来、「夏越」と「年越」の関係、一週間後の七夕行事との関連などを簡単にまとめてみた。

星の願掛け行事「七夕 たなばた」については、こちらのページ「七夕 たなばた 起源・由来 物語・ストーリー」を適宜参照されたい。

年越と夏越

「夏越の祓(なごしのはらえ)」とは、年越しの祓から経過した半年間の穢れを祓う日本の伝統行事・神事。

年越と夏越は対の関係にある年間行事で、年越しでは年神が迎えられ、夏越では水の神や祖先の霊が迎えられる(7月15日のお盆につながる)。

七日盆(なぬかぼん)と七夕

夏越の祓から一週間後の「七日盆(なぬかぼん」には、7月15日のお盆に向けた準備が進められ、精霊棚や幡(はた)が供えられるほか、川で禊(みそぎ)を行い身を清める習慣も残されている(正月の寒中みそぎと対の関係)。

この「七日盆(なぬかぼん)」で供えられる精霊棚(たな)や幡(はた)は、同じ7月7日に行われる中国由来の星の願掛け行事「たなばた(七夕)」の語源と考えられている。

参照:七日盆(なぬかぼん)と七夕の関係は?

人形代 ひとかたしろ

穢れを祓う行事としては、薄い和紙を人の形に切り取った「人形代(ひとかたしろ)」に穢れを遷し、川や海に流す陰陽道系の神事も行われる。

写真:京都・貴船神社 水無月の大祓式(出典:じゃらんnet)

人形代(ひとかたしろ)に息を吹きかけたり、体の調子の悪いところを撫でるなどして、半年間の穢れを遷し、川に流す。

撫でて穢れを落とすこの行事が、「撫でる」の古語「撫づ」から、季節の「夏 なつ」の語源となったと考える説もあるようだ。

茅の輪くぐり 意味・由来

夏越の祓(なごしのはらえ)では、茅(ちがや)で編んだ輪をくぐる神事「茅の輪くぐり」が行われる。

日本の民間信仰・神話では、茅の輪はスサノオ(または牛頭天王)から授かったお守りであったようだ。茅の輪をくぐることで穢れを祓うと同時に、病気や災いから免れるという意味合いがある。

左右に輪をくぐる行為については、イザナギ・イザナミの「国生み」「神生み」の神話が関係している可能性がある。

茅の輪と日本神話の関係については、こちらのページ「茅の輪くぐりと日本神話 意味・由来」を適宜参照されたい。

蘇民将来の護符

スサノオ(または牛頭天王)と茅の輪については、「蘇民将来」という民間伝承・神話が残されている。

蘇民将来の護符は厄除けにご利益があるとして、京都の八坂神社をはじめとする牛頭天王関連の神社で授与されている。

護符は「夏越の祓」の時期のほか、年越の祓の時期にも縁日などで販売されている(信濃国分寺八日堂)

参照:蘇民将来と牛頭天王 八坂神社の祭神

京都の和菓子「水無月」

「夏越の祓(なごしのはらえ)」が行われる6月の別名は「水無月(みなづき)」。このことから、夏越の祓は「水無月祓」(みなづきのはらえ)とも呼ばれる。

京都では、この時期に「水無月」という和菓子を食べる習慣がある。

水無月は、ういろう生地に小豆を乗せ、三角形に包丁で分けた和菓子。小豆は邪気を払い、三角の形は暑気を払う氷の意味があるという。

穢れを祓う時期に邪気払いの小豆を食べる習慣としては、1月15日の小正月に食べる小豆粥(あづきがゆ)がある。

夏越ごはん(かき揚げ丼)

近年になって、雑穀入りの米飯(または赤飯)の上に夏野菜のかき揚げをのせた「夏越ごはん」と呼ばれるかき揚げ丼が考案され、飲食店やスーパーなどで広まりを見せている。

上に乗せる丸いかき揚げは、「夏越の祓」における「茅の輪」をイメージしているという。

外食チェーンストア「やよい軒」では、この「夏越ごはん」をいち早くセットメニューに取り入れて提供している。

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