メジロとウグイスを混同?本当に?

梅の木にとまるメジロをウグイスと勘違い?

早春に花の蜜を求めてツバキや梅の花に群がる可愛い小鳥メジロ。目の周りの白い輪が特徴で、名前の由来にもなっている。

写真:水戸市の偕楽園で観察されたメジロ(出典:Wikipedia)

メジロと同じく春の小鳥にウグイスがいるが、ウィキペディアの解説によると、メジロとウグイスは昔から混同されやすかったらしい。

本種とウグイスは両種ともに春を告げる鳥として親しまれていたこともあってか、時期的・場所的に重なる両種は古くから混同されがちであった。

<引用:ウィキペディア「メジロ」/2018年12月現在>

その理由として、メジロの姿は見かけやすいが、ウグイスは警戒心が強く啼き声は聞かれても姿を現すことはあまりない、という説明がなされている。

つまり、ウグイスの声を聞いても、実際に視界に入る鳥はメジロであり、その声の主がメジロだと勘違いしやすいという理屈なのだろう。これは日常生活ではよくありそうな誤解だ。

ところで、メジロとウグイスの混同に言及される話題は主に二つある。一つは「梅に鶯(うぐいす)」という成句。もう一つは花札の絵柄。この二つの話題について簡単にまとたうえで、私見を述べてみたい。

梅に鶯(うぐいす)はメジロなのか?

「梅に鶯(うめにうぐいす)」とは、「絵になる良い取り合わせ」または「仲のよい間柄」のたとえ。日本の詩歌や絵画の題材としてよく用いられる組み合わせ。

梅(紅梅)にウグイス

写真:梅(紅梅)にウグイス(出典:武蔵野の野鳥)

この「梅に鶯(うめにうぐいす)」についてネットで検索してみると、「メジロとウグイスを混同して生まれた言葉」のような解説が散見される。

しかし、この成句はあくまでも、詩歌や絵画の題材としての美しい組み合わせ・ペアリングから生まれた言葉であり、メジロとウグイスを混同したことによるものではない。

詳しくは、こちらの解説「梅に鶯 うめにうぐいす 意味・由来」をご参照願いたい。

花札の絵柄はメジロ?ウグイス?

上述の話題とも関連するが、日本のかるたの一種である花札(はなふだ)には、「梅に鶯(うめにうぐいす)」という絵柄がある。

花札の絵柄のウグイスについては、確かに見た目・デザインの特徴がメジロに近く、何も考えずに絵だけ見れば、これはメジロと混同・誤解したのではないかとの疑念が生じる余地がある。

花札 2月の10点札「梅に鶯」

画像:花札 2月の10点札「梅に鶯」の比較(出典:ウグイス考 花札の鶯

花札の絵柄がウグイスなのかメジロなのかについては、こちらのサイトが非常に詳細にわたって研究を行っている。

関連サイト:ウグイス考/「梅に鶯」 本当は「梅に目白」というウソ

その結論としては、「デザインとしての絵札を写実として論議すること自体がナンセンス」として、メジロと混同したわけではないとの主張がなされている。

確かに、ウグイスの体は地味な色なので、花札の絵柄にそのままデザインしてしまうと地味な印象になってしまい、ゲームにおける高得点の札としてはインパクトにかける可能性がある。

十分にウグイスとメジロを区別したうえで、花札として見栄えがする絵にするため、あえてメジロ的な明るい色合いを採用した可能性もあるだろう。

近現代の絵画でも、「梅に鶯」のタイトルで、メジロのような色合いの鳥が描かれることもあるが、これも絵画としての見栄えを優先した色使いと思われる。

絵画や花札のデザインについて、メジロとウグイスを混同していると考えるのは少々無理があるように感じられるが、皆さんはどうお考えだろうか。

まとめ・私見

日常生活で梅の木にとまるメジロをウグイスと誤解する可能性はあるだろう。特に子供はそのような混同をしても無理はない。

ただし、絵画や花札のデザインや詩歌の題材において、メジロとウグイスが混同して用いられることは考えにくい。まずありえない。

確かに、花札の絵柄はほとんどメジロ的ではあるが、これは花札という商品が売れるように、商業的に見栄えがするデザイン・親しみやすい色使いを追求した結果であると考えられる。

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