菱餅 ひしもち 意味・由来

ひなまつりで雛人形に供えられる可愛い三色のお餅

3月3日のひなまつり・桃の節句には、ひな人形と一緒に3色の菱形の餅「菱餅(ひしもち)」が供えられる。

写真:菱餅(出典:越山甘清堂オンラインショップ)

菱餅は、桃色(ピンク・赤)・白・緑の3色が定番で、それぞれの色や重ねる順番には意味が込められている。

菱餅の色の意味や重ねる順番、形の意味・由来、原料の成分・効能など、簡単にまとめてみた。

色の意味について

まず、現代における菱餅の色の意味について。今日一般的な配色は、一番上が桃色(ピンク・赤)、真ん中が白、一番下が緑となっている。

緑は健康・新緑、白は清浄・純白の雪、桃色(ピンク・赤)は桃の花を表している。

重ねる順番にも意味があり、一番下の緑は新芽、白は大地を覆う雪、桃色(ピンク・赤)は桃の花が咲いている様子が表現されている。

白と緑が逆になっている菱餅もよく見られるが、この場合は、真ん中の緑は雪から芽を出した新緑という意味合いになるだろう。

使われた植物について

菱餅には、かつてクチナシの実、ヒシの実、ヨモギが使われていたという。

桃色(ピンク・赤)にはクチナシの実が、白にはヒシの実が、緑にはヨモギが使われていたようだ。

それぞれの植物と菱餅の関係について、簡単にまとめてみた。

クチナシの実について

かつて、桃色(ピンク・赤)の餅にはクチナシの実(下写真)が使われていたという。

クチナシの果実は、古くから「黄色」の着色料として用いられており、現代でも栗きんとんやたくあんの「黄色」の着色に用いられている。

クチナシの実

現代の技術では、クチナシを酵素で発酵させることで「青色」や「赤色」の着色料にもなっているが、その技術が昔の日本に普及していたかは不明。

昔の技術であれば、「赤色」を出すならクチナシではなく、紅花などの食紅を使った方がはるかに簡単だったのではないだろうか。クチナシと紅花を併用していた可能性も考えられる。

ヒシの実について

菱餅の白い餅の部分には、かつてヒシの実が使われていたという。

ヒシ(菱)は、ミソハギ科(ヒシ科)一年草の水草。池沼に生え、葉が水面に浮く浮葉植物。皇居のお堀の水面にも見られる。

ヒシの実

写真:ヒシの実(出典:ジャムこばやし)

菱餅の形である菱形は、このヒシの実や葉の形に由来している。菱餅を菱型に切る意味については諸説あるが、当サイトの解釈としては、ヒシの実のようにとがった部分で邪を祓う「魔よけ」の意味合いがあると考えられる。

トゲで魔よけという考え方は、節分(せつぶん)でヒイラギを魔よけ・邪気払いとして飾るのと同じ意味合いと思われる。

ヒシの実の中は白く、でんぷんが豊富で、加熱するとクリのような味がする。かつてヒシの実で餅が作られていたようで、それはまさに「菱餅(ひしもち)」という名前の由来となっている。

ちなみに、忍者が追手の追撃をかわすために撒く「まきびし(撒菱)」とは、4本のとげがあるオニビシやヒメビシが使われていたという。

ヨモギについて

菱餅の緑はヨモギ餅。ヨモギはキク科の多年草で、春につんだ新芽を茹で、おひたしや天ぷらなどで味わうことができる。

写真:ヨモギの若葉(出典:Wikipedia)

三色になったのは明治以降?

現代の菱餅は三色が定番となっているが、この三色の形になったのは明治時代以降のことだそうだ。

2色だった菱餅ですが、明治時代に入ると、ここに山梔子(さんしし。クチナシの実のこと)を入れた赤が入って3色になりました。

<引用:AllAbout 暮らしの歳時記より>

つまり江戸時代以前は普通の白い餅とヨモギ餅の二色だけで、それを3段や5段に重ねていたという。

元祖は中国

菱餅の由来は、古代中国における3月3日の厄払い行事「上巳節(じょうしせつ)」に食べた草餅が起源とされている。

中国の草餅には「母子草(ははこぐさ)」が使われていた。母子草とは、春の七草のひとつ「御形(ごぎょう)」のこと。

日本に伝わった際、母と子を杵でついて草餅にするのは縁起が悪いとして、代わりにヨモギが用いられるようになった。

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