グッドナイト・レイディーズ
Goodnight, Ladies

童謡『メリーさんの羊』メロディのルーツ・原曲・元ネタ?

『グッドナイト・レイディーズ Goodnight, Ladies』は、19世紀アメリカの音楽家エドウィン・ピアース・クリスティ(Edwin Pearce Christy/E. P. Christy/1815–1862)がミンストレル・ショー向けに作曲したとされるフォークソング。

初版は1867年。1847年出版の自身の作品のリメイク版(歌詞とメロディが追加されている。)

曲の一部に童謡『メリーさんの羊 Mary Had a Little Lamb』と同じメロディで歌われる部分が登場するが、両曲の関係・歴史については後述する。

『グッドナイト・レイディーズ Goodnight, Ladies』の歌詞では、船乗り達が寄港した港町で出会った女性たちに別れを告げ、夜の海へ出発する様子が描写されている。

ミンストレル・ショーとは?

ミンストレル・ショー(minstrel show)とは、顔を黒く塗った白人が歌や踊り・寸劇などを披露するエンターテインメントで、19世紀アメリカで大流行した。

作曲者のE.P. クリスティは、このショー向けにクリスティ・ミンストレルズ(Christy's Minstrels)を1843年に立ち上げた。スティーブン・フォスターも彼のために楽曲を提供している。

ちなみに、『グリーン・グリーン』を歌った音楽グループ「ニュー・クリスティ・ミンストレルズ」は、E.P. クリスティのグループ名から名前を取っている。

【試聴】 Goodnight Ladies 1955

この動画では、歌詞を若干変えて、番組のエンディング曲的に使用されている。

歌詞の一例・日本語訳

1.
Goodnight, ladies! Goodnight, ladies!
Goodnight, ladies! We're going to leave you now.

おやすみ お嬢さん方!
僕らは出発するよ

CHORUS:
Merrily we roll along, roll along, roll along.
Merrily we roll along, o'er the dark blue sea.

コーラス:
陽気に進もう 暗く青い海を

2.
Farewell, Ladies! Farewell, ladies!
Farewell, ladies! We're going to leave you now.

さよなら お嬢さん方!
僕らは出発するよ

コーラス:

3.
Sweet dreams, ladies! Sweet dreams, ladies!
Sweet dreams, ladies! We're going to leave you now.

甘い夢を お嬢さん方!
僕らは出発するよ

コーラス:

『メリーさんの羊』と同じメロディが登場?

若干マイナーな『グッドナイト・レイディーズ Goodnight, Ladies』が今日注目されることがあるとすれば、それはやはり童謡『メリーさんの羊 Mary Had a Little Lamb』との関連性が焦点となるケースが多いと思われる。

上述の歌詞でいうと、次の箇所が『メリーさんの羊』と同じメロディで歌われる。

Merrily we roll along, roll along, roll along.
Merrily we roll along, o'er the dark blue sea.

両曲のメロディはほぼ完全に一致しており、どちらかがもう一方のルーツ・原曲・元ネタになっていることは間違いない。一体、どちらが先に作曲された楽曲なのだろうか?

メーソンが作曲?メロディは今と違う

メリーさんの羊』の歌詞が発表されたのは1830年。これにメロディが初めてつけられたのは、ローウェル・メーソンが1833年に出版した小学生向け歌集「少年少女の竪琴 Juvenile Lyre」(楽譜あり)でのこと。

ただし、ローウェル・メーソンが1833年の歌集に掲載したメロディは、今日私たちが愛唱している『メリーさんの羊』のメロディとは全く異なるものであることに注意が必要である。

言い換えれば、最初にメロディをつけたのは確かにローウェル・メーソンだが、今日有名なメロディは他の誰かが作曲した可能性が高いということになる。

では、一体誰が今日有名な『メリーさんの羊』のメロディを作曲したのだろうか?

一つの有力説として、この『グッドナイト・レイディーズ Goodnight, Ladies』を原曲とする説をご紹介したい。

『グッドナイト・レイディーズ』がルーツ?

『グッドナイト・レイディーズ Goodnight, Ladies』が『メリーさんの羊』の現在のメロディのルーツ・原曲・元ネタであるという説を唱えたのは、ノーザン・イリノイ大学の名誉教授・司書長ウィリアム・スタッドウェル(William Emmett Studwell/1936–2010)。

スタッドウェル教授が1997年に出版したアメリカ歌謡研究書「The Americana Song Reader/Haworth Press」から、『メリーさんの羊』に関する該当箇所を次のとおり抜粋・翻訳してみたい。

Only one year after its initial printing, 'Mary Had a Little Lamb' had received enough attention to be set to music (but not the present melody).

The marriage of the now very familiar melody and lyrics took place in an 1868 collection of college songs. In that publication, Hobart College in Geneva, New York, was identified as the completed song's place of origin.

意訳:(歌詞の)初版からわずか1年、『メリーさんの羊』はメロディがつけられるほど人気となった。ただし現在のメロディではない。

今日なじみのあるメロディと歌詞が結合したのは、1868年出版の学生歌集でのこと。この書籍により、ニューヨークのホバート大学が『メリーさんの羊』のルーツであることが分かる。

The tune had been taken from an 1867 printing of 'Goodnight, Ladies.' .... The first part of the earlier song appeared in 1847, and 20 years later, another version added a second part, "Merrily We Roll Along." The melody for the new second section was the one used for 'Mary Had a Little Lamb.'

意訳:このメロディは、1867年出版の『グッドナイト・レイディーズ Goodnight, Ladies』から取られたものである…冒頭は1847年の初版に登場するメロディで、20年後のリメイク版で追加された「Merrily We Roll Along」の部分が、『メリーさんの羊』に使われたメロディである。

大学生が考えた替え歌だった?

スタッドウェル教授の説をまとめると、1867年出版の『グッドナイト・レイディーズ Goodnight, Ladies』中間部のメロディに、ホバート大学の学生が替え歌で『メリーさんの羊』の歌詞をアレンジして当てはめたものが、現在の『メリーさんの羊』の歌詞とメロディのルーツであるということになる。

つまり、大学生が当時最新の歌謡曲を替え歌して学生歌としたのが今日の『メリーさんの羊』というわけだ。

あくまでもこれは一つの説ではあるが、明らかにこれに反する客観的な証拠が登場しない限り、この学生替え歌説を『メリーさんの羊』のルーツとみなしてもいいのではないだろうか。

また何か新たな資料が見つかり次第、このページで情報提供していく予定だ。

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ローウェル・メーソンが1833年に出版した小学生向け歌集。ここで『メリーさんの羊』に初めてメロディがつけられた。
ミンストレル・ショー(minstrel show)
顔を黒く塗った白人が歌や踊り・寸劇などを披露するエンターテインメント。『グッドナイト・レイディーズ Goodnight, Ladies』もこのミンストレル・ショー向けに作曲された楽曲。
スティーブン・フォスター 有名な曲
『グッドナイト・レイディーズ Goodnight, Ladies』作曲者のE.P. クリスティは、アメリカ民謡の父スティーブン・フォスターと深い交流があった。