ムスターファ(ムスタファ)
Ya Mustafa (Ya Mustapha)

アラビア語、フランス語、イタリア語の多国籍なコミック・ソング

『ムスターファ(ムスタファ) Ya Mustafa (Ya Mustapha)』は、1950年代から60年代にかけて世界中で流行したエジプト系ポピュラーソング。起源については諸説あり不明。

一般的な歌詞の言語はアラビア語(エジプト方言)、フランス語、イタリア語の3か国語が入り混じった多国籍なもの。歌われる国によってその一部が各国の言語に差し替えられて歌われることもある。

【YouTube】Bob Azzam 『Ya Mustafa (Ya Mustapha)』

【YouTube】Mustafa Ya Mustafa - Rida Boutrus

歌詞・曲名の意味は?

「ムスターファ(ムスタファ)」の意味は、恐らく一人の男性の名前を表しているものと思われる。同名の歴史上の有名な人物としては、オスマントルコの国王(ムスターファ1世など)や、トルコ共和国初代大統領ムスタファ=ケマルなどが挙げられる。

『Ya Mustafa』のリフレイン部分の歌詞は次のとおり。多国籍な言語とナンセンスな内容の歌詞がミスマッチ寸前の絶妙なバランスで渾然一体となり、全体としてユニークなコミック・ソングとなっている。

Chérie je t'aime, chérie je t'adore,
como la salsa del pomodoro

ダーリン愛してる ダーリン大好き
トマトソースと同じぐらい

主なカバー曲あれこれ 日本の坂本九も

世界各国で『Ya Mustafa』はカバーされ、様々な言語のバージョンが存在するが、最も早い時期としては、トルコ出身のシンガーソングライター、ダリオ・モレノ(Darío Moreno/1921–1968)による1950年代のカバー盤が知られている。

その後1960年代に入ると、エジプトのシンガーソングライター、ボブ・アザム(Bob Azzam/Wadie George Azzam/1925-2004)によるカバー曲がフランスでリリースされ、ヨーロッパ中でヒットを記録した。

ボブ・アザム盤の編曲には、バークレー・レコード(Barclay Records)の創設者でフランスの音楽プロデューサーのエディ・バークレィ(Eddie Barclay/1921–2005)も加わっている。

日本では1960年8月、ソロ歌手に転向した坂本九(さかもと・きゅう)が東芝レコード移籍後の第1弾シングルとして、『ムスターファ Ya Mustafa』を日本語にカバーした『悲しき六十才』をリリースした。

同曲は坂本九にとって初のヒット曲となり、その翌年にリリースされた『上を向いて歩こう』は海外でも大ヒット。坂本九は一躍世界的なスターの座を獲得した。