れんげ摘もか(つもか) 歌詞の意味

耳に巻いて すっぽんぽん♪ もう一つ巻いて すっぽんぽん♪

『れんげ摘もか(つもか)』は、ゲンゲの花(蓮華草)を題材にした日本の古いわらべうた・遊び歌。歌詞は地方によってバリエーションがある(後述)。

わらべうた『今年の牡丹はよい牡丹』と同じように、鬼ごっこの開始前に歌う小芝居パートでも歌われる(鬼ごっこについては割愛)。

ゲンゲとは、マメ科ゲンゲ属の越年草で、レンゲソウ(蓮華草)や、単にレンゲとも呼ばれる(写真の出典:Wikipedia)。

童謡『春の小川』の「れんげの花」も同じくゲンゲ。これに対して、わらべうた『ひらいた ひらいた』の「蓮華の花」はハスの花なので別物。

かつてゲンゲは水田や畑一面に緑肥(りょくひ)として植えられており、春に花を咲かせるゲンゲ畑は春の風物詩とされていた。

一面のゲンゲ畑の中で、女の子たちは『れんげ摘もか』を歌いながら、ゲンゲをつんで楽しく遊んでいた。男の子たちはザリガニ釣りに夢中だった。

歌詞の一例

れんげつもか はなつもか
ことしのはなは(れんげは) ようさいた
おみみをまわして すっとんとん
もひとつまわして すっとんとん

歌詞の一例(京都)

げんげ摘も 花摘も
今年のげんげは よう咲いた
手にまァいて スッポンポン
も一つまァいて スッポンポン 
耳にまァいて スッポンポン
も一つまァいて スッポンポン

歌詞の一例(大阪)

蓮華草(げんげ)つも 花摘も
ことしのげんげは よう咲いた
耳に巻いて すっぽんぽん
もう一つ巻いて すっぽんぽん

歌詞の一例(岡山)

たんぽぽ摘もうや
れんげ摘もうや
今年のれんげは よう咲いた
お耳に飾って スッチョンチョン
もひとつ飾って スッチョンチョン

耳に巻く意味は?

上述の歌詞に「耳に巻いて」「お耳に飾って」とあるが、花を摘んで耳に巻くという動作がどうもピンとこない。

花輪を作って頭に乗せるのなら分かるが、耳に巻くとは一体どんな遊びなのだろうか?

岩波文庫「わらべうたー日本の伝承童謡」によれば、

6、7歳の女児がレンゲ草の花の茎を長く摘んで、 それを編んで輪をつくり、耳に巻いて遊ぶ時にこの唄を歌った

と解説されている。花ではなく茎を長めに摘んで、それを輪にして耳に巻いたという。花輪の方が見栄えも良く可愛いと思うが、当時の子供たちにとっては茎の輪っかの方が面白かったのだろうか。

耳は「身々(みみ)」?

創元社「わらべうた 子どもの遊びと文化」の解説によれば、『れんげ摘もか』の歌詞における「耳」とは、それぞれの体を表す「身々(みみ)」だという。

花を一つ摘んでは、耳のへんでくるくる回す。 が、この「耳」は「身々」であって、蓮華草の花輪を、からだいっぱいに巻きつけて踊ろうというのが、本当の意味のようである。 「すっぽんぽん」も、仕舞の鼓の音を示している。 なにわの子どもらしい風流なわらべ唄である。

皆でレンゲを摘んで花輪を作り、それをそれぞれの体「身々(みみ)」に巻き付け、小鼓(こつづみ)のポンポンという拍子に合わせて踊ろうという興味深い解釈だ。

すっぽんぽんの意味は?

現代では「すっぽんぽん」は素っ裸(すっぱだか)や裸(はだか)を意味するが、もちろん『れんげ摘もか』ではその意味では使われていないことは異論はないだろう。

この「すっぽんぽん」の意味については、次のような解釈が考えられる。

1.単なる囃子詞(はやしことば)

日本の古い民謡にある「ハー ドッコイショードッコイショ」や「ションガイナ」などのように、歌の調子を整えるために歌詞の合間に挿入する無意味な囃子詞(はやしことば)。

2.小鼓のポンポンという音

上述の創元社「わらべうた 子どもの遊びと文化」で解説されていたように、小鼓(こつづみ)のポンポンという音が変化したもの。

3.たんぽぽが変化した言葉

上述の岩波文庫「わらべうたー日本の伝承童謡」では、江戸時代に次のような歌があったという。

つばな摘もう つくし摘もう 
今年のげんげは よう咲いた
よめ菜つんだら たんぽぽう
よめ菜つんだら たんぽぽう
<大蔵長太夫 狂言秘本「筍盗人」>

これが当時の子供たちが唄っていた歌なのか、それとも狂言の中で創作が加えられた替え歌なのかについては明らかではないが、この狂言が何らかの影響を与えている可能性も考えられる。

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