The Moorlough Shore
ムアロック(ムアロッホ)・ショア

愛するのは彼一人 彼を待つわ ムアロックのほとりで

『The Moorlough Shore』(ムアロック/ムアロッホ・ショア)は、ある青年の失恋を歌った19世紀のアイルランド民謡

歌詞の冒頭では、失恋した青年が育った北アイルランドの美しい自然が描写される。北アイルランドのティロン州(County Tyrone)にかつて存在した地名が言及されており、「Moorlough Shore」とは具体的には現在のモーン川(The River Mourne)(下写真)を指しているようだ。

「Moorlough」の単語をあえて分解してみると、「moor(ムア/ムーア)」とは湿原や沼地を意味するほか、特にイングランドやスコットランドなどに点在する草木が広がる荒野を指す場合がある。

「lough(ロック/ロッホ)」とは、アイルランドやスコットランドでは「Loch」ともつづられ、「湖 みずうみ」を意味する。2013年には、北アイルランドのアーン湖(ロック・アーン/ロッホ・アーン)周辺でG8サミットが開催されている。

また、話は逸れるが、アイルランドでも最も古いキリスト教の遺跡がある観光名所グレンダロッホ(Glendalough)には、山々に囲まれた二つの大きな湖がある。グレンダロックとも呼ばれる。

【YouTube】The Corrs - Moorlough Shore

【YouTube】Sinead O'Connor The Moorlough Shore

歌詞の意味・日本語訳(意訳)

Your hills and dales and flowery vales
That lie near the Moorlough Shore.
You winds that blow through Burden's grove.
Will I ever see you more

山々と花咲く谷間
ムアロック(ロッホ)のほとりで
木立を風が吹き抜ける
また見られるだろうか

Where the primrose glows
And the violet grows
Where the trout and salmon play.
With my line and hook delight I took
To spend my youthful days.

サクラソウが色づき
スミレが花をつける
マスやサケが泳ぎ
糸と針で釣りを楽しんだ幼い頃

Last night I went to see my love,
And to hear what she might say.
To see if she'd take pity on me,
Lest I might go away.

昨日の夜 好きな人に会いに行った
彼女の気持ちを聞くために
僕が去ってしまわぬかと
気の毒に思ってくれるか確かめに

She said, "I loved an Irish lad,
And he was my only joy,
And ever since I saw his face
I have loved that soldier boy."

彼女は言った「私はあるアイルランドの若者を愛していた
彼は私の唯一の喜びだった
彼の顔を見たその日から
私はその兵士の少年に恋をしていた」

Perhaps your soldier lad is lost
Sailing over the sea of Maine.
Or perhaps he's gone with some other one
You may never see him again.

多分ソイツは死んでるよ
メインの海で航海中に
他の誰かとくっついたかも
二度と会えないかもしれないよ

Well if my Irish lad is lost,
He's the one I do adore,
And seven years I'll wait for him
By the banks of the Moorlough Shore.

それでもいいの
私が愛するのは彼一人
7年間彼を待つわ
ムアロック(ロッホ)のほとりで

異なる歌詞やカバー盤など

アイルランド民謡『The Moorlough Shore』は、『The Maid of Mourne Shore』や『Moorlough Mary』など、様々なタイトルや異なる歌詞で歌われている。

異なる歌詞がつけられたバージョンとしては、アイルランドで1916年に発生した歴史的事件イースター蜂起(Easter Rising)をモチーフとした『Foggy Dew フォギーデュー』が最も有名だと思われる。

また、アイルランドの国民的詩人イェーツの詩『Down by the Salley Gardens サリーガーデン』が『The Moorlough Shore』のメロディにつけられて歌われるケースもあるようだ。

『The Moorlough Shore』をカバーしレコーディングしたアーティストとしては、アイルランド出身の女性歌手シネイド・オコナー(Sinéad O'Connor/1966–)や、アイルランド出身のコアー兄妹によるフォーク・ロック・バンド、ザ・コアーズ(The Corrs)、スコットランドの女性シンガーソングライター、カリン・ポルワート(Karine Polwart/1970-)などが有名。

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