加速度ワルツ(加速度円舞曲)など ヨハン・シュトラウス特集

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新しい技術が新曲のテーマ?~蒸気機関車に電信技術・機械化の波~

ロケット号
ロンドン科学博物館に保存されているロケット号の実物(出典:Wikipedia)

 シュトラウスの曲にはユニークなタイトルの曲が多いが、一つ一つ丁寧に見ていくと、実は作曲当時の時代背景が反映されているようで、とても興味深い。

加速度ワルツ

 例えば、作品234の『加速度ワルツ(加速度円舞曲/Accelerationen Op. 234)』はその典型とも言うべき曲だ。この曲が発表されたのは1860年頃。1830年のイギリスで世界初の蒸気機関車ロケット号による旅客鉄道が開通して以来、ヨーロッパ各国では次々と公共機関としての蒸気機関車が導入されていった。

 もちろんシュトラウスの住むオーストリアにもその波は押し寄せ、ウィーンの近代化は着実に進んでいった。時代の流れに敏感なシュトラウスは、当時の最新技術であった蒸気機関車が徐々にスピードを上げて加速していく様子をワルツに描き込み、『加速度ワルツ』として一つの作品に仕上げてしまったというわけだ。

電信ワルツ

 ワルツ『電信(Telegramme op. 318)』は、1867年の作品。電信とは、アメリカのモールス信号(符号)に代表されるような当時最新の通信技術。オーストリアでは1850年代から電信が標準規格として使用され始めていた。1868年7月には、ウィーンでUTI(Union Télégraphique Internationale/国際電信連合/現ITU)の会議が開催され、現在の電信の原型が国際規格として承認されている。

はずみ車のワルツ

 ワルツ『Schwungrader, Walzer, Op. 223』も、当時の最新技術を反映したと思われる曲の一つだ。「はずみ車」とはフライホイールとも呼ばれる機械部品の一種で、重い円盤を高速で回転させて、運動エネルギーを一時的に保存するための部品。身近な例としては、レコードプレーヤーのターンテーブルや、足踏み式ミシンのベルトを駆動させる輪の部分などが挙げられる。

永久機関(常動曲)

 作品257『常動曲(Perpetuum mobile) Op. 257』は、たった八小節の主題が少しずつ変化しながら延々と繰り返されるユニークな曲。サブタイトルを『管弦楽のための音楽の冗談』としていることから、シュトラウスもある程度軽いスタンスで作曲した作品と思われる。当時のヨーロッパに爆発的に押し寄せた機械化の波の中、無機質で黙々と同じ動きを続ける機械を嘲笑するかのように、シュトラウスはこの曲を皮肉とジョークを交えて書き上げたのだろう。

 ちなみに、シュトラウスの『常動曲(Perpetuum mobile) Op. 257』に見られるような
常に一定した音符の流れを特徴とする楽曲や楽章は、独立した楽曲のジャンルとして19世紀末まで人気の手法だった。例えばショパン『ピアノ・ソナタ第2番』の終楽章、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ『テンペスト』、『熱情』、ニコライ・リムスキー=コルサコフの『熊蜂の飛行(くまんばちは飛ぶ)』などの一部が挙げられる。


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