舟歌 バルカロール Barcarolle

ラフマニノフ (Sergei Rachmaninoff/1873-1943)

ラフマニノフが作曲した「舟歌 Barcarolle(バルカロール/バルカローレ)」作品としては、組曲第1番(作品5)第1楽章、サロン小曲集(作品10)第3曲、4手のピアノのための6つの小品(作品11)第1曲などいくつか残されている。

このページでは、「舟歌」を含めてラフマニノフが二十歳の頃に作曲した組曲第1番(作品5)について簡単にご紹介したい。

他の作曲家による舟歌(Barcarolle)については、こちらの特集「舟歌 Barcarolle 有名な曲」を適宜参照されたい。

【YouTube】ラフマニノフ「舟歌」 2台のピアノのための組曲第1番より

【YouTube】演奏:Martha Argerich & Dario Ntaca

2台のピアノのための組曲第1番

ラフマニノフ組曲第1番、正式には「2台のピアノのための組曲第1番『幻想的絵画』」、または「2台のピアノのための幻想的絵画」は、ラフマニノフが二十歳の頃(1893年)に作曲されたピアノ・デュオ曲。

第1楽章「舟歌」、第2楽章「夜―愛」、第3楽章「涙」、第4楽章「復活祭」の4つの楽章から構成され、楽譜の各楽章の冒頭には、作曲のインスピレーションの元とされる詩人の詩が添えられている。

「舟歌」に付された詩は、ミハイル・レールモントフによる次のようなくだりであった。

ラフマニノフ組曲第1番 第1楽章 「舟歌」

おお、涼しいゆうべの波が、
ゴンドラのオールを静かに打つ。
―あの歌がまた! またギターで鳴る!
―遠くでいまは、憂鬱そしてまた幸せに、
聞こえるのは古い舟歌の響きか、
「ゴンドラは水面を滑り、
時も愛とともに飛び去る、
水はふたたび穏やかになり、
情熱はもはや高まらない」
(詩:ミハイル・レールモントフ)

チャイコフスキーに献呈された組曲第1番

チャイコフスキー『トロイカ』解説ページでもふれたが、ラフマニノフは10代半ばの頃、ニコライ・ズヴェーレフ宅でピアノを学んでおり、そこへ訪れたチャイコフスキーから才能を見い出され、特に目をかけられていた。

組曲第1番はチャイコフスキーに献呈するべく作曲された曲であり、チャイコフスキーはラフマニノフによる初演を聴く約束もしていたが、1893年、交響曲第6番『悲愴』初演から9日後の11月6日にチャイコフスキーは急逝してしまった。

「舟歌」を含む組曲第1番の初演は、チャイコフスキーの死後から4週間近く経過した1893年11月30日のモスクワで、ラフマニノフ本人とモスクワ音楽院教授パーヴェル・パプストにより行われた。

組曲第1番のように、楽譜の冒頭にエピグラフを添えることはラフマニノフ作品にはあまり見られないケースといえる。

チャイコフスキーの作品でも、ピアノ曲集『四季』のように詩と音楽が合わせて掲載される作品が存在し、その一曲には「舟歌」も含まれているが、恐らくラフマニノフ組曲第1番は、尊敬するチャイコフスキーのそういった作品へのオマージュだったのかもしれない。

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