ファウスト交響曲 Faust Symphony

フランツ・リスト(Franz Liszt/1811-1886)

『ファウスト交響曲(3人の人物描写による)』は、交響詩の創始者とされるフランツ・リストによる1857年初演の交響曲。

作曲のきっかけは、初演から30年近く前の1830年12月4日、『幻想交響曲』の初演を翌日に控えた友人のベルリオーズからフランス語版のゲーテ「ファウスト」を紹介されたことにあるという。

フランツ・リスト

写真:1858年当時のフランツ・リスト

ゲーテ「ファウスト」はフランツ・リストの愛読書となり、1840年代には作品のスケッチ・構想が練られ始め、1854年頃から本格的な『ファウスト交響曲』の作曲活動が開始された。

現在の『ファウスト交響曲』第3楽章フィナーレでは、ベートーヴェン第9を思わせる「神秘の合唱」が加えられているが、1854年10月の初稿段階ではこの合唱部分はなく、楽器編成も決定稿と比べて少なめの構成となっていたようだ。

【YouTube】Liszt: Faust Symphony

1時間以上に及ぶ長大な交響曲

フランツ・リスト『ファウスト交響曲』は、その標題のとおりゲーテ「ファウスト」を題材としているが、「3人の人物描写による」とのタイトルが表わすように、物語の内容そのものよりも、主要な登場人物であるファウスト博士、恋人のグレートヒェン(Gretchen)、そしてメフィストフェレス(Mephistopheles)の3人の人物像に焦点を当てた描写がなされている。

登場人物に合わせるように3つの楽章から成り、第1楽章ではファウスト博士、第2楽章ではグレートヒェン、そして第3楽章ではメフィストフェレスが、ひとりずつそれぞれの性格・キャラクターが表現されている。

各楽章の演奏時間はそれぞれ20分以上を要し、3楽章合計で1時間以上の長大な演奏時間となる『ファウスト交響曲』は、ピアノ作品の人気の高いフランツ・リストによる交響曲ということもあり、その演奏時間の長さとあいまって、なかなか演奏機会もなく、演奏が収録されたCDの数もそれほど多くはないようだ。

はじめて『ファウスト交響曲』を鑑賞される方は、概略だけでもゲーテ「ファウスト」のあらすじやストーリー、そして3人の登場人物の役どころをおさえておかれると大きな助けとなるだろう。

なお、ゲーテ「ファウスト」第一部の簡潔なあらすじについては、シューベルト歌曲『糸を紡ぐグレートヒェン Gretchen am Spinnrade』の解説も適宜参照されたい。

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